温故知新のその先へ -100年続く老舗の織り成す、京漬物の味と思い-|川勝總本家 - 香を利 〜香りが導く利の旅へ〜

 下京区は今年で140周年を迎えた。その下京区で100年以上に渡り店を構える京漬物の老舗「川勝總本家」。大正6(1917)年の創業から102年目を数える歴史ある京漬物屋とは一体どのようなお店なのだろうか。

川勝總本家とは

 京都駅前から京都市営バス (206番)に乗り約10分。大宮五条で下車すると風情ある京町家が佇んでいる。「川勝總本家本店」である。

築100年を超える店内では沢山の漬物が販売されており、そのほとんどが試食も可能だ。趣ある京町家の佇まいを楽しみながら、時間を忘れて自分の好きな漬物に出逢える場所である。


加工の町・京都、川勝總本家を知る

 大正6(1917)年の創業から今年で102年を迎えた「川勝總本家」は6月17日と18日に創業大感謝祭が行われた。

そこで下京区の魅力を発見すべく、川勝總本家さんにインタビュー。対応してくださったのは川勝總本家専務取締役の川勝隆義さんだ。


川勝總本家さんは今年102年を迎えました。創業大感謝祭には毎年何人のお客さんがこられるのですか。

 毎年2日間で800〜1000人のお客様がこられます。お客様の中には日頃お世話になっている取引先の方にも来ていただいています。


創業大感謝祭のために漬け込んであるお漬物とは何でしょうか?

 今年は「あっさり涼菜漬」と「胡瓜と茄子の醤油漬」です。2日間限定で販売します。

夏にはピッタリのお漬物ですね。今が旬のおすすめのお漬物はありますか。

 今が旬というと、夏野菜のお漬物ですね。

例えば茄子やきゅうり、かぼちゃ、ウリです。試食もありますのでぜひ食べてみてください。


はい!
ところで、川勝總本家さんで販売されているお漬物は全て京都産の野菜を使っているのですか。

 万願寺とうがらしや賀茂茄子、かぶなどは京都産です。しかし、すべての野菜が京都産というわけではありません。

なぜなら、川勝總本家では全国から美味しい野菜を厳選して漬物にしているからです。

 もともと京都は加工の町。地方で大量生産された野菜を京都で手を加え美味しいお漬物に仕上げるのです。川勝總本家では年間約200種の漬物を扱っています。

京都が加工の町とは知りませんでした。
ちなみに厳選された野菜を使ってつくられたお漬物の種類によって香りや風味は変わってくるのですか。

 そうですね。浅漬だと漬ける期間が短いこともあって野菜のみずみずしい香りがします。一方古漬や塩漬は酸っぱい発酵臭がします。

醤油漬はもちろん醤油のいい香りがします。

糠漬には「浅漬かり」と「古漬かり」の2種類があって「浅漬かり」だと野菜の香りが、「古漬かり」だと酸っぱい発酵臭がします。


それぞれに特有の香りや風味があるのですね。お漬物の食べ方によって香りや風味は変化するのでしょうか。

 お茶漬けとして食べると風味は変わるかもしれませんね。ですけど香りや風味を楽しむにはそのまま食べるのが一番です。

 他にもお酒のあてにお漬物を食べたり、生ハムとかぼちゃの浅漬に白ワインをあわせたりするのもいいと思いますよ。

自分で美味しい食べ方を発見することも楽しみだと思います。


お漬物はお酒のあてにもなるのですね。試してみます。
川勝總本家のHPから、今の時代にあったお漬物作りに注力し、なおかつ原点の味を残したいという使命感が伝わってきました。川勝さんのお考えをお聞かせください。

 昔、お漬物は家庭で作られるものであり、一般的なものでした。

その中で、様々な漬け方が考案され、旬の野菜を美味しく仕上げられた京都のお漬物は天皇や寺社仏閣に献上され、さらに世に広まっていきました。

そういった伝統を守っていきたいです。しかし伝統を守ることに囚われ、考えることをやめては衰退します。

川勝總本家では毎月商品開発を行っていて、私達が持っている技術を利用して日々新しいものを作っています。商品開発の際、従業員にはいつも「1+1を繰り返せ」と言っています。


最後に川勝さんが考える「京漬物、そして川勝總本家の魅力・こだわり」とはなんでしょうか。

 川勝總本家は今年で102年を迎えます。これは100年近くお客様がついてきてくれているということ。やはり美味しい漬物をつくるのが使命だと思います。

100年続く漬物を作った先代のバトンを受け取るときに、我々に関わってくださる取引先の方やお客様そのすべての方を裏切っては絶対にいけない。それ故、漬物づくりには大変厳しく取り組んでいます。漬物づくりを通して得られる喜びのために苦労していますよ。

見えてきたのは、職人意識と伝統・革新の京漬物

 取材を通して感じたことは、川勝さんの職人意識の高さと漬物に込められた思いだった。

100年の伝統を守り重んじる中で決して固執することなく、新しい漬物を創る。それは川勝總本家の掲げる「温故創新」そのものだった。

今の時代にあった漬物を創ること。考えることをやめては必ず衰退が待っている。どんなに小さなことでもいいから「1+1を繰り返せ」。その1の積み重ねがやがて大きなものになる。川勝總本家が創るのは流行ではない。100年の伝統や先代の思い、そして今を担う職人の思いが幾重にも重なり織り成す京漬物なのだ。

我々は「香り」という切り口から下京区の魅力を探り、川勝さんに出会った。その出会いの先に待っていたのは、伝統・革新の京漬物だった。

漬物の漬け方によって香りは変化していくことの奥深さは新たな発見だった。

ぜひ皆さんにも味わってほしい。


『川勝總本家本店』

https://www.kawakatu.com/

京都市下京区大宮通五条上ル上五条町394

営業時間:午前9時〜午後6時まで / 年中無休(但し、1月1日〜3日まで休業)

TEL:075-841-0131(代)

社会とつながる文学部 Ryukoku Letters +Social

龍谷大学文学部での「学び」を活かし、大学生たちが京都市下京区の「魅力」を独自のテーマで切り取ったオリジナルマップの制作に取り組んでいます。

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