伝統ある御香調進所、香りのデパート|薫玉堂 - 香を利 〜香りが導く利の旅へ〜

香を利 〜香りが導く利の旅へ〜

私たちは日々、素敵な香りに出会っている。しかし、気になってはいても、それがどんな香りなのか、知らないままでいる。私たちは、そんな香りを知るために、香りがテーマの地図を作った。

地図のテーマは「香を利~香りが導く利の旅へ~」である。このテーマは、香りは日々の暮らしを豊かにするものであり、そしてこの地図が香りの旅への道しるべになればという思いで付けたものだ。



あなたの好きな香りは? 

香りは日常のいたるところにひそんでおり、そしてそれは、私たちの生活と密接にかかわっている。あなたには、好きな香りがあるだろうか?

私は、なぜだか分からないがガソリンスタンドの香りが好きだ。石油のツンとした鼻に残る感覚がたまらない。あるいは、本の香りが好きだ。紙とインクの混ざった落ち着く香りにうっとりする(谷書店の記事も御覧ください!)。


京の香りといえばこのお店! 

香り好きなあなたも、このお店に来ればきっと満足することができる。これから紹介するのは、京都の香りスポットの代表ともいえるだろう、お香の専門店「薫玉堂」である。本願寺の門前にあるこのお店は、老舗の御香調進所として実に長い歴史を誇っている。

薫玉堂は昔から様々な仏教の本山や寺院にお香を進納してきた。と同時に、常に様々な「香りの持つ可能性」を追求し、その時代の香りを作り続けてきた。今回はそんな薫玉堂を訪ねて、総務課の加藤さんに話を伺った。

実際に訪れて

お店に入る前に、薫玉堂の前で、お香が焚かれていることに気が付く。京都の伝統を感じさせるようなどっしりとした、それでいて爽やかな香りで、自然とお店の中に導かれる。風の向きにもよるかもしれないが、店舗からかなり離れた場所からも、香りを感じることができた。



歴史の話

まず、薫玉堂の歴史について伺わせてもらった。

薫玉堂は1594年、現在の地に薬種商として創業した。なんと今年で425年!薬種商というとピンとこないが、昔は薬や漢方を扱うといえばお香のお店だったという。

薫玉堂の名称は、正式には「負野薫玉堂」といい、これは本願寺と織田信長が戦った石山合戦で、本願寺が負け、御影を背「負」って逃げたことから「負う」という漢字が付いたそうだ。

また、「負」の漢字の「ク」の部分が正式な表記だと「刀」になっている。これもその戦の時代の名残なのだそう。 

次に、商品を見ながらお香についてお話を聞かせていただいた。店は2階まであり、1階は主に仏前などで使うお香を扱っている。

お香は何でできているんだろう?

 お香の原料は様々である。今回ご紹介いただいたのは、香木の沈香(じんこう)と白檀(びゃくだん)だ。

 沈香は熱帯雨林の環境で、特殊なバクテリアが存在する東南アジアのみで採ることがで きる。熱を加えることで香る。白檀はインドが主な産地。そのままの状態で香る。どち らも日本では採れず、海外から輸入しているという。

  

お焼香とお線香の違いって?

香木を細かく削ったものが「お焼香」。粉々にしてぎゅっと固めて棒状にしたものが「お線香」だ。


お線香の色は何故みどり?

実は着色していて、お店ではカラフルなお線香を販売している。着色してないと木の色(茶色)。お線香の起源は江戸時代というのだから、思いのほか歴史は浅い。 


特に高級なお線香は?

伽羅(きゃら)といって、ベトナムの限られた地域でしか取れない沈香の香木。なんとグラム単価4万円以上!金より高い!

続いて2階へ案内していただいた。2階は暮らしの中で使われる、部屋炊きのお香が扱われている。順にたくさん紹介していただいた。

2階に上ってすぐにある大きな白檀の根。嗅いでみたが香りはしなかった。表面を削ると香りが出てくるそう。



移り香(におい袋)

もともと着物に入れて持ち歩くようにできた、香りを持ち歩くための袋。タンスやクローゼットにいれたり(虫よけのものもある)、カバンにいれて持ち歩いてもいい。車のミラーにぶら下げている人も多いのだとか。香る期間は1年くらいで、その間の香りの変化も楽しめるとのこと。

写真はカエルの匂い袋。背中の袋の中身を入れ替えることで、様々なにおいを何度でも楽しめる。玄関先に置いておくといいかも。花柄のカエルの親子がかわいいので、私のお気に入り。実際は沢山の種類がありすべて手づくりでつくられているとのことだ。

文香

手紙に添えて送るお香。香りの贈り物。こちらも見た目がかわいい。いろんな動物や、京都にちなんだ建物のイラストなどが描かれている。平安時代に手紙にお香の香りをつけて送っていたのが、もとのアイディアになっているのだという。

塗香(ずこう)

加藤さんイチオシ!(うえの写真で持っていた商品がこれだ。)

文字通り、手に塗るお香である。実際に塗らせてもらったが、心地いいお香の香りに包まれた。取材後は一日中、紙に文字を書いている時も、スマホを触っているときも、ずっと心が安らぐいい香りがしていた。体温によってだんだん香りが立つのだそう。

また、新たなブランディングとして、いろいろな新しいお線香がある。ここでは特に気になったものだけを紹介するので、自分で訪れてみて実際に嗅いでみてほしい。



北山のバラ

イメージとして和風なお線香と、洋風なバラとを組み合わせた一見ミスマッチにも思えるお線香。イメージしづらいところが、嗅いでみたくなる魅力を持っている。

祇園の舞妓

ドキッとする商品名だ。あくまでイメージで、実際のものとは異なるかもしれないが、おしろいの香りを想像して作ったという。その場でお香を焚いて、嗅がせてもらうことができた。イメージとしては、バニラのような香りだった。舞妓さんに思いをはせながら嗅いでみてほしい。

今回驚いたのは、アロマキャンドルやハンドクリーム、フレグランスオイルなど、洋風なものも取り扱っていたことだ。原料には、お香の原料も使われているものもあり、「“香りの総合デパート”を目指している」とのことだ。

イチオシ商品は?

堺町101

このお香は、“薫玉堂の香り”である。薫玉堂はいろいろな香りが混ざり合ってできている。そんななかで「薫玉堂の香りが欲しい」というニーズがあり、この「堺町101」ができた。商品名である「堺町101」は薫玉堂の住所である。



京のせせらぎ

水の香りをイメージしてつくられたお香だそう。先ほどの、お店の前で焚かれているお香もこれだそう。私は「水の香りがする!」と感じたが、箱が水色だったからそう感じたのかもしれない。


お香の魅力とは

最後に、加藤さんにお香の魅力について伺った。

「五感、たとえばみたりさわったり、とはちがって、香りは一瞬で過去にタイムスリップさせてくれます。そういうところも魅力ですね。あとは、新緑の香りだったり、梅雨の香りだったりって、いい香りですよね。私はもともと香りが好きで、今の仕事で香りに携われて幸せです。香りは日々を豊かにしてくれます。」

薫玉堂では、たくさんの種類のお香を楽しめる。あなたもきっと、自分の好きな香りに出会うことができるだろう。(僕の好きなガソリンスタンドの香りに近いものもあるかも!?)

自分の好きな香りを、自分の好きな場所で、自分の好きなように。とても素敵なことだ。

加藤さんがおっしゃったように、香りには、ほかにはない魅力がある。香りは自分だけでなく、ほかの人と楽しむこともできる。近くにいる人と香りを共有し(今回紹介した文香では遠くにいる人とも)、一緒に楽しめことも香りの魅力の一つではないだろうか。

香りは暮らしを豊かにしてくれる。だがそれは、意識していないと気が付かないこともあるだろう。ぜひ一度、薫玉堂を訪れて、暮らしを豊かにする香りの魅力を味わってみてほしい。


『薫玉堂』

京都市下京区堀川通西本願寺前

tel : 075-371-0162

営業時間 9:00~17:30 (第1・3日曜定休)

社会とつながる文学部 Ryukoku Letters +Social

龍谷大学文学部での「学び」を活かし、大学生たちが京都市下京区の「魅力」を独自のテーマで切り取ったオリジナルマップの制作に取り組んでいます。

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