時間を忘れ、いざ非日常空間へ。|フランソワ喫茶室 - 擬洋の国へ 〜fall in〜

高瀬川の傍にて

和の風情が漂う高瀬川の傍に、自分が異国にいるかのように錯覚するような、趣のある西洋建築の喫茶店があります。お店の外観を見ているだけでも異国の雰囲気に浸ることができます。

そのお店の名前は<フランソア喫茶室>

オーナーの今井香子さんは「ここは“非日常”体験を味わえる場所です」とおっしゃっていました。

<フランソア喫茶室>は、まさしく外界と隔絶されたような空間であり、非日常そのものでした。では、皆さんも一緒に非日常空間を覗いていきましょう。

↑外からの様子               ↑店内の様子




取材の動機

私はコーヒーが好きなため、以前から個人経営型の喫茶店に行きたいと考えていましたが、本講義の取材を通じてその願いを叶えることができました。

下京区には多くの喫茶店があります。その中でも、特に<フランソア喫茶室>には行ってみたかったため、取材先に選びました。



取材前に調べたこと

取材をする前にお店について調べてわかったことは、喫茶店で唯一登録有形文化財に登録されていること、戦時中には言論の自由なリベラルなサロンの場となっていたこと。

また、有名な文化人が訪れていること、有名な画家の貴重な美術品が飾られていることなどです。とても興味深い場所であることがわかりました。



オーナーの今井香子さんに伺いました 

Q:他の喫茶店にはないお店の特徴・魅力を教えてください。


A:貴重な美術品・インテリアがあること。様々な文化人・知識人の憩いの場であるこ

とです。


Q:いつから創業しているお店ですか?


A:1934(昭和9)年に開店。創業者の立野正一がフランスの画家フランソワ・ミレー の

名前にちなんで店名を付けました。店の設計(バロック様式建築)はイタリア人の

ベンチベニさん(京都大学建築家の留学生)が行いました。ステンドガラスのデザイン

は、ドナルド・キーンと親交のあった画家、高木四郎によるものです。


Q:創業者はどのような方ですか?


A:立野正一は美術学校に通っており、フランソア・ミレーが所属するバルビゾン派(自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いた一派)というフランスで生まれた絵画の一派と、自然主義文学の作者である武者小路実篤・志賀直哉に傾倒していました。風景画や農民の姿に惹かれていたこともあり、戦時中には社会主義思想を持つことになりました。


Q:どのような年代(世代)の利用者が多いですか?


A:老若男女問わず来ます。学生もやって来ます。


Q:一押しメニューは何ですか?

 

A:コーヒー、ケーキ、コーヒーゼリーです。


Q:お店をやっていて楽しいことは?


A:様々なお客様が来て会話ができることです。

 

Q:お店をやっていて大変なことは?

 

A:お店の経営です。


Q:建築の老朽化対策(メンテナンス)は?

 

A:20年に1度の内壁の塗り替え、50年に1度の基礎の工事。腕のある職人に頼むこと

が大切です。


Q:これからの展望(夢)はありますか?

 

A:新しいことをするのではなく、この店の伝統を維持することです。



取材を通じて考えたこと

<フランソア喫茶室>の原点には、立野正一さんによる芸術(絵画・文学)の受容があります。

そしてこの「原点」にも、江戸時代の鎖国政策を廃止し、日本が諸外国と関わりを持つようになった背景があります。

当然ですが、日本が江戸時代以降もずっと鎖国政策を続けていたとすれば、このお店を始めとする西洋建築の建物や伝統・文化が日本に存在することはなかったはずです。

このお店のできた背景について考えてみると、日本が諸外国の文明・文化を受容していった一端を垣間見ることができます。




取材を終えて

創業者の立野正一さんの思想からこのお店が始まり、その後、様々な文化人が足跡をお店に残していきました。

作家の大江健三郎や画家の藤田嗣治など、様々な文化人がお店に来てひとときを過ごしました。

今はその様子を見ることはできませんが、この空間に座って想像を膨らませることはできます。

「かつてこのお店ではこのようなことがあった」「かつてあの人がこのお店に来た」と考えながらコーヒーを片手に一息つくことは素敵なことだと思いませんか?    

このお店にある非日常性は、創業当時から変わらぬお店の姿と共に、多くの文化人や画家が残した足跡によって、空間に対して特別なイメージを持つことができるから生まれるものだと思います。

見えるものと見えぬものが共存して、この空間の非日常性が生み出されています。

↑取材後に頂いた白い泡で包まれたコーヒー


このコーヒーは、俳優の宇野重吉のために考案されたものです。コーヒーが苦くて飲めない宇野のために作られた、フレッシュクリームとエバミルクをホイップしてその上からコーヒーを注ぎ入れるスタイルです。多少の苦みとコクをしっかりと残しており美味しかったです。




『フランソア喫茶室』

住所:京都市下京区船頭町184 四条下ル, 西木屋町通

HP:http://francois1934.com/index.html

営業時間:10:00~22:30

定休日:無休 ※12月31日、元旦、1月2日は休業

社会とつながる文学部 Ryukoku Letters +Social

龍谷大学文学部での「学び」を活かし、大学生たちが京都市下京区の「魅力」を独自のテーマで切り取ったオリジナルマップの制作に取り組んでいます。

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