姿や形を変えながらも、人々に受け継がれていくものがある|取材後記 - 擬洋の国へ 〜fall in〜

擬洋の国へ 〜 fall in 〜

龍谷大学大宮学舎は「擬洋風建築」という、明治初期に造られるようになった「洋」を「擬」えた建築です。

「擬える」とは「真似をすること」。「擬洋風建築」は、純粋な西洋建築とは違います。

それは西洋と日本、時にはアジアとも掛け合わされた非常にユニークな建築物です。

私たちの考える「擬洋」とは、日本における西洋文化の受容そのものです。近代社会の始まりと共に流入された西洋文化が日本人に受容され育まれていく。そして、年月と共に様々な形に発展していく。純粋な西洋文化ではなく、日本人が受容し、育んで行くことによって新たな独自の文化が生まれる。この一連の流れを「擬洋」であると考えました。

この地図では、「龍谷大学大宮学舎」を中心に、京都市下京区にある「擬洋」されたお店、施設を紹介していきます。また、中には長い月日を経て、内装を変え、再活用されている建物もあります。

つまり、姿や形を変えながらも、人々に受け継がれていくものがあるということです。

「不思議の国」へと続く「ウサギの巣穴へ」と《fall in》するように、「擬洋の国」で異国《foreign》の一面に出会いましょう。

なぜこの建物ができたのか、その背景を一緒に見ていきましょう。


取材先の紹介とその様子について


《フランソア喫茶室》

高瀬川の傍、四条河原町から徒歩数分。戦前よりある西洋建築(バロック様式)の喫茶店です。和の風情が漂う場所にあり、一層に異国のかおりを感じることができます。店内は、豪華絢爛な装い。クラシカルなインテリア・壁に飾られた著名人の絵画・独特な置物・教会を彷彿させるステンドグラスなど、魅力的なモノで溢れています。

フランソワ喫茶室には、様々な文化人が訪れています。

『万延元年のフットボール』で有名な大江健三郎氏や猫や女性の絵を得意とした藤田嗣治氏などが来店しています。戦中には「リベラルなサロンの場」として展開されていました。


《喫茶ソワレ》

戦後すぐに創業した青いテントと瓦が印象的な喫茶店です。
「ソワレ」とは、フランス語で「夜会」「素敵な夜」を意味します。

先ほど紹介した《フランソア喫茶室》と同様に、高瀬川の傍にあるお店です。店に入ると、青い照明が迎えてくれます。
この個性的な青い照明は、染色家の上村六郎氏が「女性をより美しく見せるために」と提案されたそうです。
また、店内には彫刻家の池野禎春氏によって作られた彫刻作品が多くあります。とても精緻な造りです。絵画は、東郷青児氏や二科会の作品が飾られており、どれも店内の落ち着いた雰囲気に合った作品です。

《Kaikado Café》

茶筒の老舗「開化堂」が2016年に七条河原町にてオープンしたカフェです。

お店の建物は、かつて市電の車庫兼事務所として利用されていたもので、リノベーションして現在のお店の姿となりました。

洋風の外観と銅製の照明器具を取り入れたスタイリッシュな店内、和と洋が融合することによってできた素敵な空間です。陽の光が多く入る広々とした窓によって店内には解放的な雰囲気が生まれています。お店のメニューは、どの商品も厳選された仕入先から取り入れたもので、開化堂のこだわりの強さを感じることができます。メニューに載っている日本茶は、他のカフェには見かけることのない、開化堂ならではの特徴です。

《龍谷大学大宮学舎》

JR京都駅から徒歩約15分。世界遺産に登録されている西本願寺の隣に位置し、大宮学舎内の本館・北黌・南黌・旧守衛所・渡り廊下は重要文化財に指定されています。

龍谷大学大宮学舎は、1979(明治12)年に完成。明治・大正・昭和・平成・令和と5つの時代に渡る非常に長い歴史を持っています。

今回は龍谷大学文学部教務課の恩田さんに、龍谷大学大宮学舎の歴史やその背景などを伺いました。取材では、恩田さんが、龍谷大学の歴史が書かれた冊子や大宮学舎のパンフレットを用いて、丁寧に解説してくださいました。また、本学の学生でも気付きにくい点や、大宮学舎に精通しているからこそ分かる点なども解説してくださいました。

《旧二条駅舎:京都鉄道博物館》

「旧二条駅舎」は京都鉄道博物館の敷地内にある建築で、建物内には旧二条駅舎の歴史や、鉄道の歴史について展示されています。

明治37(1904)年に建設され、日本最古級の木造駅舎といわれています。平成8(1996年)に京都市指定有形文化財に指定されました。

取材では、京都鉄道博物館を案内していただき、いろいろな説明をしていただきました。今回取り上げたのは旧二条駅舎のみですが、京都鉄道博物館全体としてもかなりの魅力が詰まった場所だと感じました。

私は京都鉄道博物館を訪れたことがありませんでした。最初のイメージでは鉄道の難しい言葉がたくさんだと思っていましたが、展示の解説文もわかりやすく新しく知ることも多くあり鉄道に詳しくない方でも楽しめるのでは、と思います。

今回の取材で気づいたこと。

平尾:

私が取材した先は、3軒とも長い間に渡って展開されているお店です。どのお店のオーナーさんにも強いこだわりと思いがあると感じられました。また、オーナーさんの思いだけでなく、お店を支える周囲の方々の協力もあることがわかりました。<フランソア喫茶室>は、創業者である立野正一氏の芸術・思想が具現化したものとしてできたもの。<喫茶ソワレ>は、創業である元木和夫氏が新しいもの・個性的なものが好きなことによってできたもの。<Kaikado Café>は、西洋建築として造られた市電の車庫兼事務所をリノベーションすることによってできたもの。お店ができた背景には、このようなことがありました。取材をしなければわからなかったお店の裏側について知ることができました。


須藤:

今回の龍谷大学大宮学舎の取材を終えて、改めて、貴重な環境で勉強できているのだなと感じました。京都という和風の建築物が多く建て並ぶ場所で、西洋風に建てられた背景にはどのような意味が込められているのかが理解できました。単に文明開化の欧化政策によって西洋風に建てられたのではなく、そこには浄土真宗、西本願寺の哲学も込められている点は、大宮学舎ならではだと感じました。


庄田:

旧二条駅舎(京都鉄道博物館)での取材はとても楽しかったです。広報の方はとても優しく、不慣れな取材で失敗が多かったのですが、そこにも優しく対応してくださりました。京都鉄道博物館は家から徒歩で数分の場所にあるのですが、これまで一度も行く機会がありませんでした。行ってみると、とても魅力的で楽しい場所だったので機会があればまた行きたいと思います。また、アポ取りの難しさや電話での話し方、メールでのやり取り、書類のやり取りなど勉強になることが多くありました。班の人のを見よう見まねで手探りながらやっていったのですが、今後はもっと効率よくできるようになりたいです。


社会とつながる文学部 Ryukoku Letters +Social

龍谷大学文学部での「学び」を活かし、大学生たちが京都市下京区の「魅力」を独自のテーマで切り取ったオリジナルマップの制作に取り組んでいます。

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