大正からつづく親子三世代の書店|三密堂書店 - 擬洋の国へ 〜fall in〜
“仏の身・・の三カ所におけるはたらきを(三業)といい、特に密教・真言宗では
人間だけではなく生あるものすべての三業を「三密」としています。”
三密堂書店HPより
三密堂書店とは、大正5~10年あたりに開業された、寺町通りの古本屋です。
寺町通りとは?
河原町通り近くの小さな通り。平安京の東端「東京極大路」に当たる。名前の由来は秀吉がここに寺を集めたことから。
熊猫学舎塾通信 2019参照
入口左右には本棚やディスプレイが外設されており、思わず足を止める人の姿も。
昔ながらの右から読む銅製の看板は、戦時の物資不足による「金属類回収令」の対象になりかけたこともあるそうです。
「三密堂書店」は何度も内装を変えつつ、外観と看板は開業当時のまま受け継がれてきました。また2004年には、2階を小さなギャラリーとして使えるよう、改装が行われました。
三密堂書店の歩み
「三密堂書店」は大正5~10年ごろ、初代店主・森下 政次郎さんが、同じ下京区の本屋「藤井文政堂」での(職人・商家などに年季奉公をする少年のこと)を経て、開業しました。
「三密」という名前は、当時の真言宗智山派の智積院51世住職、滝 承天さんにつけていただいた、真言宗由来のものだと伝えられています(記事冒頭参照)。
開業当初は品物が少なく、「仏教」の経典類を中心とした本屋でした。ですが、戦後からは“古”本屋へ路線変更していき、以来さまざまなジャンルの本が姿を見せるようになりました。
今でも仏教関係の単行本を中心に展開されており、「三密」の店名エピソードのこともあって、特に密教や真言宗のものが多いようです。
また、日本が古来より「神仏習合」であることに倣って、「神道」の本も集められています。
2代目店主・森下 正三郎さんの頃からは、「易学」を学びたいというお客さんのニーズに答え、易学書も扱われるようになりました。易学自体の幅広さも相まって、今では仏教の次に多いジャンルだそうです。
利用者の多くは年配の方で、「学び」をやめないその姿勢に、3代目店主・森下 正巳さんも感服していました。
「仏教」「易学」といった専門的な本となると、読者のみなさんは高価なものを想像してしまうかもしれません。ですが「三密堂書店」では、100~200円代の文庫本・単行本も置かれています。また最近は、若い人もよく訪れるそうです。
森下 正巳さん曰く、古本との出会いはその場そのとき限りのものなので、「見つけたらすぐ買ってください。次にお店に来たとき、その本があるとは保証できません」と念押しされました。
3代目店主・森下 正巳さんの見つめる古本屋
“古本屋のおもしろいところは昔の本も使うところ。
ジャンル的なヨコの広がりだけじゃなくて、時代的なタテの広がりがある
3Dで奥行きがある“
3代目店主・森下 正巳
店主の森下さんにはいろいろと興味深い話を聞かせていただきました。上述の言葉はその中の一つで、上図はそれをイラストにして表した物です。
2階のギャラリーについて尋ねたとき、森下さんは密かな夢を語ってくださいました。
昔の古本屋には「サロン」としての側面があり、学舎や著名人が集まっては、どういった文献があるのか調べたり、本にまつわる色んなことが語り合われていたりしたようです。
森下さんは2階のギャラリーを、かつての古本屋の「サロン」のようにしたいそうです。
実際に、2階のギャラリーでは、『易、風水、暦、養生、処世 東アジアの宇宙』の著者・観水野杏紀さんによる易学を中心に東洋を学ぶ「学舎塾」が年に5回、開かれています。
京都三大古本市
なお、京都では組合「京都古書研究会」が中心となり、年に3回ほど古本市が開かれます。
時期と場所については、
5/1~5/5 春の古書大即売会 京都市勧業館「みやこめっせ」1F第二展示場
8 /11〜8/16 下鴨納涼古本まつり 下鴨神社糺の森
10/29〜11/3 秋の古本まつり-古本供養と青空古本市- 百萬遍知恩寺境内
で毎年開催されていますが、「秋の古本まつり」については文化の日である11/3を基本的に最終日としていますが、年によっては1日ほどずれることもあるそうです。
「春の古書即売会」は大規模なもので、会計は一箇所にまとめられています。また、そこでは20~30の学生が毎年、レジや梱包といったことをしているようです。
夏の「下鴨納涼古本まつり」は下鴨神社で開かれ、また児童書コーナーが設置されているのが特徴です。各書店のレジの他、こちらで「読み聞かせ」や「紙芝居」を行う学生もいるそうです。
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